2022年4月の体外受精の公的医療保険適用開始から、来月で4年が経過します。この4年間には体外受精の行える医療機関数が増加し、治療の普及が進む一方で、次の課題として医療機関ごとの「品質管理」や「倫理基準」の格差が浮き彫りになっています。
そのような環境の中で、一般社団法人 JISART(日本生殖補助医療標準化機関、本部:大阪府大阪市、理事長:絹谷正之、以下「JISART」)は、国内唯一の体外受精の品質管理団体として、後述の「6つの柱」を軸に、日本の生殖医療における最高水準の維持により一層注力してまいりました。
患者の皆さまが安心して治療に臨み、お子さんを望む1組でも多くのカップルが科学の力で報われる社会のために、生殖医療従事者が守り抜くべき「品質」とは何か。JISART及び認定施設である全国約30の精鋭クリニックが維持している圧倒的な「品質」の基準を改めて公表いたします。
JISARTは、日本の生殖医療の品質を世界水準へと引き上げるために結成された、国内唯一の体外受精の品質管理団体です。ISO9001を基盤とした厳格な認定審査に合格した施設のみが、「JISART認定」の呼称を用いることが許可されています。
JISART認定施設では、そのほとんどが国際品質管理規格であるISO9001を現在も取得、または過去に取得していた実績を有します。加えて、患者団体も含めて組織された専門の審査委員会による立入検査を受け、400項目以上の厳格な審査項目をクリアして初めて認定を受けることができます。審査後も、日々の生殖医療行為はJISARTが定めたマニュアルに沿って行われ、生殖医療を通じた事故や、品質のブレを極力減少させる仕組みが整っているのです。
体外受精の成否を分けるのは、医師の診断に加え、配偶子や受精卵を扱う「ラボ(培養室)」及び胚培養士(エンブリオロジスト)の技術・品質です。JISART認定施設では、そのスタッフのすべてが世界基準の高いレベルの技術を保有することはもちろん、単に技術があることに甘んじず、ヒューマンエラーをゼロにするための徹底したダブルチェック体制と、受精卵の取り扱いに関する独自の厳しい管理基準を徹底しています。
体外受精における最大の社会的リスクは精子や卵子、そして受精卵を「取り違えてしまうこと」です。例え治療の結果お子さんを授かることができたとしても、取り違えがあった場合には親子双方にとって悲劇的な結末となる可能性もあり得ます。JISARTが考える品質とは、「妊娠に至る技術」ではなく、「体外受精を通じて幸福になっていただくための技術」なのです。
私たちは、不妊治療を単なる「医療処置」とは考えていません。患者様の心に寄り添うカウンセリング体制、プライバシーに配慮した空間、スムーズな受診を支える事務オペレーションなど、看護・受付・心理部門まで含めた「患者満足度」を組織として管理しています。
医療は技術のみならず、患者様の心理的負担をいかに軽減できるかが問われます。JISARTでは、医師だけでなく看護、事務、受付、心理カウンセリングの全部門において「患者さま目線」の管理を徹底しています。費用をかけて対外的な広報発信やSNS、検索サイト等のレビューを充実させる「外注型ホスピタリティ」ではなく、来院された1人1人の患者さまに真摯に向き合うことを重視しているのです。
生殖医療は、時に「技術でできること」が「倫理の社会的議論」を追い越してしまう危険があります。JISARTは、設立以来20年以上にわたり、この難問に正面から向き合ってきました。
JISARTが活動を行ってきた20年間は、まさに社会における家族や親子のあり方が多様化し、生殖医療技術も急速に発展した20年間だと言えます。技術は常に進化を続けますが、個人や社会の「価値観・倫理観」は時代とともに変化し、不妊治療を行なった時点の価値観や倫理観が、数十年後も同じであるとは限りません。
だからこそ、JISARTは医療技術でできることと社会の間に立ち、高度生殖補助医療技術の社会的な側面にも配慮と議論を繰り返しているのです。
全国に点在するJISART認定の約30施設は、互いに切磋琢磨するライバルであると同時に、患者さまを守るための強固な「地域インフラ」であるとも言えます。
不妊治療を行うカップルは、年代的にいわゆる「働き盛り」であることが多く、そのライフスタイルの中では時に転居を伴うことがあります。転居した全ての治療中カップルが、同じく高品質な生殖補助医療を享受することができるよう、JISART及び認定クリニックは地域を超えた緊密なネットワークを全国に構築しています。
JISARTは「認定を受けて終わり」ではなく、常に最新の知見にアップデートし続ける仕組みがあります。3~4年ごとの立入審査はもちろん、日々診療を行なって終わりではなく、常に学び続けることがJISART認定クリニックの高い医療技術を支えています。そのため、JISART認定施設には国内外から多くの医療従事者が研修に訪れます。
JISART認定クリニックは、患者さまが治療を受ける場所であると共に、最先端の知見が集う教育・研修機関としての機能も果たしているのです。
先進医療の評価でも、JISARTは国内の生殖補助医療の発展に貢献しています。生殖医療は、医学の中でも極めて進化のスピードが速い分野の1つです。国内で初の体外受精児が誕生してからたった40年で、今や新生児の8人に1人は体外受精児となるまで、その技術は急速に標準化・一般化してきています。その激動の最前線で、JISARTは「先進医療」を正しく評価することで、常に進化の羅針盤としての役割を担っています。
特筆すべきは、体外受精が保険適用となった現在において、これら生殖医療品質の追求は時に「経済合理性に反する」ということです。
生殖医療の品質の核心である受精・培養は、ほとんどの医療機関において患者からは見えない無菌室(ラボ)の中で行われます。そのため、専門医でさえも患者として通院した場合には体外受精の品質を見極めることは難しいとされています。また、JISART認定の医療機関には、他の医療機関から紹介されてきた患者さまや、ご自身で転院されてきた患者さま等の難しい症例も多く、「妊娠率」のような結果スコアだけではその品質は測ることができません。利益のみを追求するのであれば、「商業的なマーケティング」と「コストダウン」だけを追求することが最適解であり、昨今そういった姿勢の医療機関が増加してきていることも事実です。
そのような社会環境・生殖医療環境の中だからこそ、品質を最優先に生殖医療を積み上げていくことが尊いのだと、JISARTは考えています。それは、生殖医療現場の1人1人が、患者さま1組1組と未来のお子さんに思いを馳せ、「品質追求」こそが患者さまと社会のためだと確信しているからです。
国内唯一の体外受精の品質管理機関として、JISART及び認定クリニックは、これからも世界に誇る日本の体外受精品質を守り抜くため、真摯な取り組みを継続してまいります。
掲載:PR TIMES(2026年1月29日09時30分)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000138329.html